「建築知識」1988年10月号
特集「エスキース・その表現とプロセス」
約20年前の建築知識。
槙文彦先生へのインタビュー(先生、お若い)引用

質問者:私はカーンの事務所にいたことがあるんですが、スケール的な検討をする時にカーンは、都市的なスケールの場合には600分の1の図面の上にサンマルコ聖堂なんかを貼っていって広場のスケールを検討していたんです。(後略)


槙先生:カーンのやり方は良く分かりますね。僕のところでもアーバンデザインのときにはかなり大きな模型を作りますし(例えば200分の1と500分の1)、我々が比較的よく知っている、あるいは比較に値する都市空間を同じスケールで作って検討して、ということはしょっちゅうやります。それからイメージの段階では、興味のあるイコノグラフィーを壁一面に貼って何とはなしに見ていることもやりますし、言葉というものもキャッチフレーズ的に使う。模型にしても、参考写真や言葉も、作業をしていく人達の内部的コミュニケーションの道具であると理解してます。

質問者:あと、先生はよくボールペンで描かれますよね。

槙先生:特に記録的なものは、鉛筆だとかすれてしまうので、ほとんどボールペンですね。万年筆とかそういうのは使わない。

質問者:万年筆はダメですか。

槙先生:万年筆は線が太すぎてだめ。にじんだりしますし、ボールペンのほうが線の強弱に対してコントロールがきくんですよ。ただ、トレペに描くときは色鉛筆は使います。ほとんど赤の色鉛筆。赤はかすれなくていいんです。