(宇野)でもなぜか、コンクリートの廃墟を写真に撮る人がいますよ。柳沢信のように、写真作品としてはかなり印象に残るものがあります。映画になりがたいとしても、不思議と写真にはなる。
(鈴木)なるんですが好奇心の目にあふれたものになりやすいんですよ。亡霊性というより、むしろ生臭くなっちゃう。そういうものじゃなくて、さっき言ったロッシ(*アルド・ロッシ)的な意味で、あるいはルイス・カーン的な意味で、コンクリートの廃墟をきれいに撮れている人はいないと思っていたら、ペドロ・コスタが出てきた。彼がコンクリートを初めて美しい廃墟として撮った訳ですよ。
鉄筋コンクリートが出てきたのは19世紀の末なんです。あれは圧縮をコンクリート、引張りを鉄に分担させたすごいハイブリッドのアイデアだったわけですよ。
でも、ここに一つの奇蹟があって、鉄とコンクリートの膨張率がなぜか宿命的に一致した。ともかくそういう偶然もあってコンクリートが現在の構造素材の地位を獲得する。ところが、その人工性ゆえにというべきか、廃墟化を常に怖がってきたんじゃないか。ガラクタにはなる、瓦礫にはなる、しかし廃墟の資格がないと。

DETAIL JYAPAN「映画の発見」対談「映画と建築の出会う場所」
宇野邦一立教大学教授)×鈴木了二(建築家/早稲田大学教授)より一部引用.*は筆者挿入。


「映画の発見!」 DETAIL JAPAN (ディーテイル・ジャパン) 2008年 7月号 別冊 [雑誌]

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そのペドロ・コスタ監督の「コロッサル・ユース」が6月20日(土)に京都で観れる。
京都ドイツ文化センターで行われるEUフィルムデーズ2009in京都。前から観たいと思っていた映画。その日は他にもデンマークハンガリーの映画も上映。全部たしたら約400分・・・・
どうしよう。