宮本佳明さんという人。
「みやもとかつひろ」と読む。3月21日の卒展クロージングイベントのシンポジウムのパネラーとして来て頂いた。お願いしたのは3.11のずっと前だったが折しも当日は東日本大震災の10日後。まだ日本中が喪に服しているような日だった。翌日までアメリカへ出張とのことで、震災についてはCNN等で情報を得たとのことだった。当日も教鞭をとっておられる大阪市立大学の会議ということで、会場に来られたのが定刻5時。シンポジウムの打合せは1分程というあわただしさだった。宮本さんといえば「ゼンカイハウス」。震災についての話題を出すべきかどうかで迷ったが、建築をやる人間として避けては通れないテーマと考えたので敢えてとりあげた。それまでゼンカイハウスについては建築誌で読む程度の知識しかなかったが、ご本人からあらためて話を聞いてみると結果では見えない部分に費やされたエネルギーの大きさに驚いた。全壊の認定を受けた宮本さんの生家である長屋の一部だけを改修補強するためには建築基準法だけの問題だけではなく裁判所との交渉が1年近くあったという。実務をやっている人間からすると解体して新築した方がずっと楽であることは瞬時にして判る話。勿論宮本さんもそんなことは百も承知だったのだろうが敢えて改修という方法を選択した。そこには磯崎新さんとのベネチアビエンナーレも関係していたという話は初耳であったがいずれにしても我々からすると「そこまでして」というのが正直な感想だった。2年という時間をかけてその長屋の改修は完成した。ご本人も正直「泣きそうだった」と・・・・
学生からの「津波に対して建築が出来ることは」という質問に対して「対費用効果を考えると高台に住むしかないのでは・・・」という回答に震災を経験された人の冷静な目に感服した。後日「新建築」に投稿されていた記事を拝見したが、そこには「やりますよ」という言葉が掲載されていた。協力出来ることがあれば協力したい。


「ゼンカイ」ハウスがうまれたとき

「ゼンカイ」ハウスがうまれたとき