イェッペ・ハイン展のチケットを頂いたので墓参りも兼ねて金沢21世紀美術館へ。京都から休憩も入れて約4時間。到着後、先ずは寺町にあるお寺へ直行し先祖の墓参りを済ませる。日帰りということもあり早速美術館へ。以前、妹島さんがプリツカー賞受賞の記念講演で「公園のような美術館をつくりたかった」と話しておられたが、そのまんま。入場料の必要なところ以外はなんの気兼ねなく入ることができる。近所の人がベビーカーに子どもを乗せて散歩したり、仕事帰りのサラリーマン風の男性が美術館にはなんの興味も示さずひたすら歩いてる。(近道ということか)丸亀の猪熊弦一郎美術館でも感じたが、こんなところに住めたらいいなと思う。


イェッペ・ハインは、1974年デンマーク生まれ。ベルリンとコペンハーゲンに制作の拠点をおき、ここ数年各国の美術館やギャラリーでの展覧会、国際展に立て続けて数多く参加し、その活躍ぶりがアート界の注目と期待を今最も集めている若手アーティストの一人。
イェッペ・ハインの作品は、観客を取り込んでユーモアのある身体的、心理的な体験を作り出すのが特徴。2003年のベニス・ビエンナーレでは噴水を迷路状に構成し、センサーで立ち入る人の動きを感知して水の壁を立ち上げ、観客を中に閉じこめてしまうという大がかりな作品を発表し、展覧会中最も大きな注目を集めた。


イェッペ・ハインという人を知らなかったが作品のブースにいる人の顔が皆笑ってる。観る人も含めて作品と言ったほうが正しいのかもしれない。印象派なんかばかり見ている人には理解不能かもしれない。一通り企画展を見終え常設展、恒久展示をゆっくり観てみる。




レアンドロ・エルリッヒ「スイミング・プール

金沢21世紀美術館の光庭のひとつに設置されたプール。ライムストーンのデッキが周囲を縁取り、ここから波立つプールを見下ろすと、あたかも深く水で満たされているかのように見える。実際は、透明のガラスの上に深さ約10センチの水が張られているだけで、ガラスの下は水色の空間となっていて、鑑賞者はこの内部にも入ることができます。光庭を囲むガラス越しの眺め、プールを見下ろすと広がる風景、さらには内部からの眺めといった多様な経験が展開される本作品は、自己や他者の感覚、存在が時間をかけてゆるやかに交差する場と言い換えられるだろう。
レアンドロ・エルリッヒ:1973年ブエノスアイレス生まれ、同地在住。
我々がどのように事象を捉え、空間と関わり、そして、現実を把握していくかということについて、レアンドロ・エルリッヒは作品を通して探求している。生み出される作品において、空間全体はユーモアとウィットに富んだ世界に変換され、鑑賞者の知覚は混乱させられる。科学的実験の厳密さではなく、だまし絵的な世界とも言えるこれらの作品群は、知覚や認知といった問題を軽やかに扱いつつ、宙づりにされる現実を前に、我々は、人が世界をどのように捉え、自身を位置づけるかという人間存在の本質について再考することを余儀なくされる。


ジェームズ・タレル「ブルー・プラネット・スカイ」

《ブルー・プラネット・スカイ》は、通り過ぎていく光をとらえ、人間の知覚(見ること、感じること)体験に働きかける作品。立方体の空間に入ると、正方形の天井の中央部分にある正方形に切り取られた空へと視線が自然と向かう。ここでは、空を通じて朝から夜まで絶えず変化する光の移り変わりを体感することが促される。しばらくこの空間に身を置いてみると、普段は気付かない感覚にみまわれる。「どのように光を感じるか」というタレルの問いかけは、私たち自身が普段は気付いていない知覚を呼び覚まそうとする。
ジェームズ・タレル:1943年ロサンジェルス生まれ、フラッグスタッフアメリカ)在住。
知覚心理学をはじめ、数学、天文学などの自然科学の諸分野と美術史を学び、1968年から71年までアメリカ航空宇宙局研究所に勤務後、光を用いた実験的な作品の制作を始める。また、飛行機の操縦体験からの影響も作品制作に伺える。ジェームズ・タレルは一貫して、光を素材として用い、光を体験する様々な空間を提示することにより、私たちの内奥にある感覚に働きかけ、知覚の本質を問いかけることを探求し続けている。

パトリック・ブラン「緑の橋」

本作品は、金沢21世紀美術館の光庭に配置されたガラス廊下の通路をまたぐかたちで設置。厚さわずか14センチメートルの壁に、金沢の気候に適した約100種類の植物が選ばれ、形や色の特徴を生かした配置が取られている。空間を広く取った北面には、ムラサキシキブやホタルブクロといった光を好む植種が選ばれ、日射量が少ない南面には、金沢近郊の山で採種されたアジサイやシャガなどの植物が植え込まれている。生きていくために必要なものさえあれば、環境が変わっても植物は必ず順応していくというブランの理論が、一つの美術作品となって四季折々に我々を楽しませてくれる。
パトリック・ブラン:1953年パリ生まれ、同地在住。
植物学者でもあるパトリック・ブランは、植物の環境への適応力を研究してきたが、きわめて限られた条件の中でも植物が生育することに着目したのがきっかけで、建物の外壁などに特別なフェルトを貼って、植物を植え込み垂直の庭をデザインする作品を展開している。

屋上で手をあげている男はヤン・ファーブル「雲を測る男」



フローリアン・クラール「アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3」

金沢21世紀美術館の建物を取り囲む芝生に設置された12個のチューバ状に開いた筒は、地中を通る管が二個ずつペアで繋がっていて伝声管の役割を果たしている。このペアはかならずしも隣通しのラッパではなく、思わぬところへ声が伝わり、思わぬ声が聞こえてくる。きわめて単純な構造だが、この仕組みによって、音が迷宮に彷徨うかのような風景が立ち現れる。ドイツ語の作品タイトルの意味は、「音のフィールド」。フローリアン・クラールが、作家活動の初期から、音が持つ可能性を反映させた作品制作に興味を抱きつづけ、本作品はその一つの展開といえる。
フローリアン・クラール:1968年シュトゥットガルト(旧西ドイツ)生まれ、藤沢市在住
音を利用した立体作品や、波のデジタル解析データを元にした作品を制作してきている。公共空間における彫刻作品も多く手がけてきた。CG画像といったテクノロジーと立体のオブジェを組み合わせることによって、日常の風景に潜む幾何学的構造や非日常的な感覚を意識させるような作品世界を生み出してきている。


マイケル・リン「市民ギャラリー2004.10.9 -2005.3.21」

マイケル・リンは、本作品制作に際し、金沢に滞在して工房を訪ねるなど、加賀友禅の歴史や手法を調査した。そうして構想された花模様は明るい光の差し込む美術館の休憩コーナーの壁一面を埋め尽くす。壁の前に置かれたSANAAによるデザインのロッキングチェアの表面にも同柄が施されている。美術館の白いニュートラルな空間に侵食するかのように、そして壁、椅子というフレームを超えて自在に拡張するような軽やかで活き活きとしたエネルギーを感じさせる。
マイケル・リン:1964年東京生まれ、台北及びパリ在住。
1999年頃から、自身の出身地台湾ではベッドカバーなどの日常品に用いられる、伝統的なテキスタイルの花柄をモチーフにして壁や床に大きな絵を描くスタイルを確立。作品はカフェ、オフィスやパブリック・スペースなど人が行き交う空間に展開また、家具やクッションなど実用品にも及ぶ。台湾に育ちアメリカで学んだ経験から培われた独自の言語によって生み出されるマイケル・リンの世界は、伝統、様式、文化という枠を超え、人々の感覚に親しみをもってはたらきかける。


ピピロッティ・リスト「あなたは自分を再生する」

トイレは誰もが必要とする浄化の場所。ピピロッティ・リストは、ここを神聖な場所と見立て、30cm四方の祭壇を設け、中にクリスタルと美術館をモデルとしたオブジェを配した。オブジェには飲食物が体内で血液、涙、内蔵組織へと変化する様を賛美するような映像と、排泄物に対しての感謝の言葉が投影されている。天使のようなリストの歌声や水の音、鳥の声などをミックスした音楽と相俟って、鑑賞者はトイレという日常の場にいながら、神秘的な世界に身をおくこととなる。
ピピロッティ・リスト:1962年ラインタール(スイス)生まれ、チューリッヒ在住。
グラフィック・デザイン、写真、ヴィデオ、アニメーション等多岐にわたる分野の習得、さらにロックバンド活動等の経験がピピロッティ・リストの作品の独自性を際だたせている。体の部分を極端にクローズアップさせ、また故意に歪ませ不快感を煽るアングル、ラディカルでコミカルな人の行動の描写と、ミュージックヴィデオのようにポップで流動的な色彩に満たされた映像・音楽とが融合した表現が特徴的。リストの作品には異質さとグロテスクさが混在しながらも人間という存在への優しい眼差しが伺える。

Colour activity house(カラー・アクティヴィティ・ハウス)》は、世界的に活躍する現代美術作家・オラファー・エリアソンによって金沢21世紀美術館のために作られた新しい恒久展示作品。本作品は色の三原色であるシアン、マゼンタ、イエローに彩色された三つのガラスの壁で構成されている。色のついたガラスの形は半円形で、三つの壁は1点を中心に渦巻き上のパビリオンを形成している。この構造の中央には細い円柱に支えられた光源があり、日没から夜明けまで無色の光を放ち、ガラスを通して色の領域に輝きを与える。
日中にガラスの壁の間を通って作品の中心まで歩いていくと、目に見える色はその動きに従ってシアンとマゼンタ、マゼンタとイエロー、イエローとシアンが混ざり合う。人々が作品の中心部分から周囲を観察しようとすると、立っている位置と日光の強度によって違う色をした美術館、広場、街の様子がみえてくる。夜間には中央に立てられた電灯によりガラス全体が照射され、作品を外側から見ると、さながら色のついた灯台のよう。光はガラスの壁の色を映し出し、見る場所や見る人の動きによって光の領域が混じり合うので、美術館の中を移動している人々は主にブルーや紫の色の体験を、広場や街を歩いている人々は、主に鮮やかなオレンジや黄色の光を見ることになるだろう。さらに、ガラスの間に、あるいはガラスの向こう側にいる偶然の出会いによって、見える風景は異なる色を通していつもとまったく違ったものになります。24時間、いつでも自由に鑑賞できるこの作品は、変化し続ける光の状態やまちの様子によって、見るたびに異なる体験をもたらすものです。個々人の体験が重なり合い共有されることで、本作品はやがて芸術という限られた領域から、日常的に人々が構築している関係性の中へ、ゆるやかに吸収されていくことだろう。これらの体験を通して人々が作品と美術館、美術館とまち、まちと人の繋がりをあらためて考え、未来に向けて発展した関係を築いていくことが期待されている。
オラファー・エリアソン:1967年コペンハーゲン生まれ、現在ベルリンとコペンハーゲンに在住。
1989年から1995年まで、王立デンマーク芸術アカデミーで学ぶ。
1995年ヴェネツィアビエンナーレに初参加以来、シドニービエンナーレサンパウロビエンナーレ(いずれも1998年)、横浜トリエンナーレ(2001年)など、世界的な国際展に招かれている。
欧米の主要美術館において個展を多数開催する中、2003年、テート・モダン(ロンドン)のタービン・ホールで発表した《The Weather Project(ウェーザー・プロジェクト)》は、特に大きな成功を納め、日本においても広くその名を知らしめることになった。自然界におけるさまざまな現象—光、影、色、霧、風、波などを作品に取り込み、鑑賞者の感覚や認知を揺り動かすことについて定評がある。鏡面の多面体の内部に入り、光や像の屈折を楽しむ作品《La situazione antispettiva(反視的状況)》(2003年)は金沢21世紀美術館のコレクションにも加えられている。
パブリック・アートの代表例としては、2008年にニューヨークのウォーター・フロントに4基の人工の滝を出現させ、作品をとりまく環境との関係をダイナミックに表現したものとして記憶に新しい。


ここは常設展で撮影できた。トップライトを使った自然の光による調光。豊田市美術館とよく似た雰囲気。
その他の写真。




デザインギャラリーの展示。
その他の写真。













意外と見落としがちなのが同じ敷地内にあるこの茶室。







美術館内にあるレストランで食べたお昼のランチセット。そこそこの金額だが十分満足の良く内容。この後「ひがし茶屋街」へ立ち寄る。レポートは後日。